ソーシャルリスニングの今後
花崎 話は変わりますけど、ソーシャルリスニングを実施する企業が今後ひろがってくるのはおそらく間違いないと思うんですが、今後どういう方向にこう進化していくのかについて泉さんなりの見解、何かお持ちですか?
泉 今の段階で言うと、「まずリスニングをしてみたらどうですか?」という段階ですよね。
アクセス解析に関して言うと決して珍しくはなくなってきていて、「どうやるか」というところが焦点になってきています。一方、多分ソーシャルリスニングに関して言うと、まだ「やるやらない」というか、「そもそもそれってなあに?」っていう段階だと思うんですよね。
なので、まずは「ソーシャルリスニングをやると少なくともこういう情報が得られますよ」とか、「こういうことは見えますよ」といったことをまずは理解していただいた上で、どのくらいの人が「じゃあちょっとやってみてもいいかな」と思うか。
そういった意味で、使われ方についてはこれから考えられていく段階ではないでしょうか。たとえば、「継続的な定点観測をしていく必要があるのか、それともアドホック的にやればいいのか」といったように。ただ、これもケースバイケースなんですよね。すでにブランドが浸透していて、ものすごいボリュームで語られている場合は、ネガティブなことが言われていないかを事前に察知するということも含めて定点観測していく場合もあるでしょうし。
一方で、そこまで大きい会社じゃない場合は、毎日毎日定点観測しても別にそんなに出てこないと思います。特に中堅中小企業の場合だと、自社のことが語られるケースっていうのはまだまだ少ないと思うんですよ。どちらかというと、自分のことがどう語られているのかを見るのではなくて、もう少し大きなカテゴリを見ていく。
昨日お話した歯医者さんを例にすれば、「あの歯医者さん」がどう語られているかの話ではなくて、「インプラント」について、世の中の受け止め方がどうなのかっていうものを見ると。そういう見方の場合は、別に定点観測する必要はなくって、まずは今の状況を見てみる。その後一定期間を経た後にどう変わったのかというのを見る、という見方だったり。
花崎 確かにそうですね。先程お話しした、当社で新しいユーザーターゲットの塊を発見したというときも、あるカテゴリからでしたね。広いところからとっていかないと、なかなかその商品やブランド、お店とか会社からというと、やはりクチコミ量が少なくなってしまう場合がある。
今のソーシャルリスニングって、主にテキスト情報をクチコミデータとしてやっていますね。それが今後、「今何をやっているか」といった行動情報もそのソーシャルプラットフォーム上に集まってくるわけです。あるいはスマホ経由で位置情報とか行動履歴もあつまってくる。これからはプロフィールデータはもちろんのこと、そういった行動履歴や興味関心も含めた様々な情報がリスニングの対象になるんでしょうね。ちょっと恐ろしい話ではありますけど。それらをどう意味づけて自社のマーケティングに活かしていくのかという、壮大な話。それこそツールの力を借りないとなんにもできないということになってくるんでしょうね。ビッグデータが大爆発していくだけに。
泉 今回ロンドンで出てた、もう一つのテーマがSoLoMoだったんです。Social,Local,Mobileを略してSoLoMo。現実世界においてこのフェイスブックのチェックインとか、フォースクエアを使ったっていう記録を全部統合していくと、おっしゃられた通り、このお店に来る人ってどこから来るということが分かるわけですよね。
実際アメリカのベンチャーでリアル版のグーグルアナリティクスみたいなサービスを提供するという会社があるようです。その人の行動履歴から店舗の流入元がある程度わかる。たとえば「コーヒーショップに来るこの人は普段オフィスにいて、ちょっと息抜きに来るのか」「いやそうじゃなくてよくショッピングに行くのか」っていうのがある程度わかるわけですよね。そんな「リアル版アクセス解析」をやろうというベンチャーもでてきています。
花崎 泉さんご自身、そしてルグランのソーシャルリスニング領域におけるこれからのゴール、やりたいことはなんでしょうか?
泉 このコンテンツはいつ頃出るんですか?
花崎 3月中にはなんとかしたいと思っていますけど。
泉 それならタイミング的にたぶん大丈夫ですね。実は、ホットリンクさんや、エム・データさんと組んで、「i love data」というプロジェクトを立ち上げるんですよ。4月23日にはキックオフセミナーもやることになっていて、まさに一昨日も打ち合わせをやっていたんです。
さっき申し上げたように、ツールはある程度出てきました。今後は「それをどう使うのか?」について啓蒙していく時期だと考えています。ツールベンダーとしては提供できるツールはあるけど、ユーザーサイドが今一つどう使っていいのかが分からないから、どんどん使ってもらえる状態にはまだなっていない。
一方で我々みたいな分析を請け負う事業者も、その価値を分かってもらわないとオーダーが来ないということで、「データを提供する人と分析する人が集まると、こういうことができるんですよ」っていうショーケース的なものを見せていきましょうというプロジェクトです。今月の後半から来月に、正式にお披露目をする予定にしています。(注:3/21に株式会社ルグランより正式にリリース済 http://www.ilovedata.jp/)
そういった意味では、今年の取組みとしてはまず啓蒙ですよね。
花崎 それはおもしろいですね!内山さんもユニークなツールの使い方を自ら実践してらっしゃいますよね。選挙予測とか株価予測とか。おもしろいですよね。実際に運用益が上がったり。クチコミがここまで社会の気分を反映するものかと、あらためて感じさせられます。
私自身、最初にリスニングツールに触れたのが確か2008年頃。大学院で内山さんに教えていただいていたので、クチコミ係長のテストアカウントをお借りして、ツールを使って課題レポートを作成したんです。そのときも他の院生から実際おもしろい調査結果がいろいろ上がってきてましたよ。
「i love data」プロジェクトの今後の活動、楽しみにしています。
最後に、泉さんの今後のご活躍とルグランさんのご発展をお祈りしつつ、あわせてご指導ご鞭撻をお願いします。しっかりとしたお仕事をぜひご一緒にさせていただければと思います。今日は長時間にわたりありがとうございました。
泉 是非。こちらこそ、ありがとうございました。