「わかる」「できる」本気でお客様とつながりたい人のマーケティング実践メディア

ソーシャルリスニングから広告まで データ分析の達人が語るこれからのデジタルマーケティング

ディスプレイの間接的な効果をどう分析していくべきか

花崎 結局サンフランシスコの時も話題になった、アトリビューション的な考え方。マーケティング活動全体の中で、「顧客がどういったシナリオをたどってブランドを体験していくのか」をいかに設計していくか。そして、トライアンドエラーを繰り返しながら、最適解に近づけていく。そんなことをやっていくということですかね。

 そうですね。特に、ディスプレイのいわゆる間接的な効果を見ていくためには、アトリビューション分析とかマルチチャネル分析といわれるものが大事になる。

逆にそれをやらないとなかなか効果が見えてこないっていう話はされていましたね。

ただ、一方でじゃあアトリビューション分析ってどうやるのっていう話ですが、いままでのダイレクトレスポンスであれば当然いわゆるCPAで見ていくんですよね。あるいはROASといった広告投下費用に対する売り上げで見ていく。まあ比較的単純な指標で見ていくんですけど、アトリビューションの場合難しいのが、方法論ですよね。あとは、KPIの設定が一つではないっていう所。

よく言われるのはビュースルーコンバージョンをどう定義するのかというと、これに明確な定義はないんですよね。もちろん計算式ですからなんでも割ってみれば割れるわけで、例えばかけた広告費を発生したビュースルーコンバージョンで割れば、コストパービュースルーコンバージョンとか出せるんですけど、それがどういう意味を持つかというと非常に難しいですよね。コストパーコンバージョンっていうのは非常に簡単で、一件の受注を取るのにいくらかかったかというのは、分かりやすいし評価もしやすいんですけども、ビュースルー一件とるのにいくらでしたよっていわれても、それが高いの安いのっていう評価は非常に難しい。実際に試してみるしかない。

株式会社大和広告 代表取締役 花崎 章花崎 やりながら改善するっていうのもあるでしょうし、目的とかゴールを各社それぞれが持って、そこに照らしてシナリオ設計をする、あるいはそれぞれの施策のKPIみたいなものを設定していく、なにを判断軸にするのかを明確にする必要がありますよね。

以前ならアクセス解析だとかサーチエンジン回りとかの分析が中心だったのが、ソーシャルメディアの中でどう語られているのかだとか、あるいはさっきのディスプレイの分析だとか、分析自体が多様化複雑化する中でやるべきことを絞っていかないと、おそらく膨大なデータに埋もれて、目的を見失いがちになりそうな気がします。当たり前ですけど、目的をチームでシェアするってことが今まで以上に大切ですね。

 そうですね。しかも、最初に目標を立てづらいっていうのがあるんです。ですからディスプレイとか間接効果で言うと、まずはテストをしてくださいと。

例えばビュースルーコンバージョンが減った時にどこに変化が表れるのか。ビュースルーコンバージョンが減ると、最終的なオーダーが減るとか、あるいは減らないとか、そこの効果を見極めるのは、例えばやめてみるっていうもの必要なんですよね。やめた結果何が減って何が減らなかったか、ということを考えて逆算する。

ビュースルーのKPIの場合、あるブランドが認知されて、ブランド名の検索が増えるというのが、実は一つのKPIなんですね。一つのトライアンドエラーから仮説をつくる。その仮説に基づいて、どれだけブランド名検索を増やせるかを目標にして、次はクリエイティブを考えていく。

このようにトライをしながら目標自体もトライアンドエラーの中で変わっていく、というプロセスが必要なのかなということが、今回のSESで繰り返し言われていました。

花崎 なるほど。キーノートスピーカーの・・・アビナッシュ・コーシックさん。この方がおっしゃっていたことで、さっき言った目的を考えるとかシナリオをマーケターが考えるときに、経営者視点がとても重要になってくると。

マクロコンバージョンとマイクロコンバージョンという対極の立ち位置から物をみるみたいなね。そんなことをおっしゃっていたようですけど。今後マーケティングに必要になってくるズームイン・アウト視点みたいなことなんですかね。

 彼は基本的にアクセス解析の人ですから、アクセス解析の視点を中心に色々とおもしろい話をしていました。「アクセス解析もいままでだとページビューとか流入数などを見てきたものの、これもCPAと同じで、もうそんな見方だけじゃだめなんじゃないか?」というのが、今回の問題提起なんですよね。たとえばページビュー数が増えたとして、もちろん増えないよりは増えた方がいいのかもしれないけれど、増えたことについての価値はどうなんだと。どこから増えてコンビネーションがどうだったかということも含めて評価していかないといけない。

そうするとやっぱりそこになんらかの評価基準を置く必要がある。その際の考え方として、マクロコンバージョンとマイクロコンバージョンっていう話がでたんです。マイクロコンバージョンっていうのはいわゆるダイレクトレスポンスのコンバージョン、あるいはアクセス解析的に言うと多分そのラストクリックに対するコンバージョンですよね。それを今まで言ってきたんだけども、彼はグーグルのエバンジェリストでもあるんですが、去年グーグルアナリティクスにマルチチャネルの機能をなぜ実装したかというと、ラストクリックだけではダメなんだということなんですね。

昨日話したZMOTの話もそうですよね。結局いまどきの消費者は、いろんな接点、媒体、メディアに複数折り重なるように接触をして、サイトや店頭にやってくる。そんな時代にラストクリックだけを見るとかダイレクトレスポンスを見るっていうのは多分全体のほんの一部しか見ていないことになってしまうわけです。だからグーグルとしてはマルチチャネルっていう機能も提供することで、直接間接の効果全体を俯瞰して、結局この活動が企業に対してどれだけの経済的な価値をもたらしたかを測る視点をもたらしたというわけです。

そして、そのエコノミックバリューを分析して、分解していくとマクロとマイクロのコンバージョンに分解できますよねと。

花崎 まあ短期と中長期みたいな、簡単に言うとそういうことですよね。

 そうですね。あるいは直接、間接ですね。デジタルマーケティング、ネットマーケティングに携わる人は、そういう視点で経営層に対して打ち出していかないとなかなかリソースや予算を確保できないだろうという、そんな問題を指摘してましたね。