SES LONDON 2014で感じたコンテンツマーケティングの新潮流
著者
花崎 章株式会社大和広告代表取締役
広島県生まれ。中央大学商学部卒。大学卒業後、広告会社営業、メーカー広告宣伝担当を経て、2002年から株式会社大和広告 代表取締役。 社長業を務めるかたわら2007年に社会人大学院デジタルハリウッド大学院に入学。主にデジタルテクノロジーとマーケティングに関する研究に参画し、オフラインマーケティングの経験と新たに獲得したオンラインマーケティングの知見と人脈を生かした幅広い活動を展開している。 その他コーチング、アクションラーニング、NLPなど、個人と組織内の効果的なコミュニケーションや学習に関する研究も行い、コラボレーションツールを活用した自社ビジネスへの応用を実践中。 また2009年「マーケティング力アップから地域活性化を目指そう」という目的でイマジナクトラボを企業内に立ち上げ、これからのマーケティングを地域に啓蒙する教育事業を実践している。
注目を集めるオウンドメディアの最適化とコンテンツマーケティング
「コンテンツマーケティング」というコトバ。
この1〜2年で本当によく目にするようになりましたね。
宣伝会議編集部が2013年末に実施した国内企業400社のアンケート調査(宣伝会議2014年2月号に掲載)によると、日本国内でも2014年の注目施策として第二位、じつに32.4%の企業がコンテンツマーケティングを挙げています。ちなみにこの調査の第一位は「オウンドメディアマーケティング」、第三位は「スマートフォン向けサイトの最適化」で、オウンドメディアを中核に据えたマーケティング活動への注目がいかに高いかがわかります。
このことから2014年は日本国内でも各社が本腰を入れてオウンドメディア活用とコンテンツマーケティングを推進していくことが予想されます。
UKではコンテンツマーケティングが浸透、そして成功ポイントは「外部リソースの活用」へ
もちろん先週開催されたSES LONDON 2014でもオウンドメディアやコンテンツマーケティングに関するセッションはたくさんありました。
CMIとDMAのリサーチ資料によると、UKではじつに94%のマーケターがコンテンツマーケティングを導入しているとのこと。何をもって「コンテンツマーケティング」と称するかという議論はさておき、UKでも多くのマーケターがコンテンツマーケティングに注目、推進していこうとしていることは間違いないようです。
そしてこの結果は「近い将来コンテンツマーケティングの実施自体があたりまえのことになったら、単にこれを実施するだけでは競争優位性がたもたれない」ということを予感させます。
UKがそんな状況ですから、先日のSES LONDON 2014でもオウンドメディア、コンテンツマーケティングに関するセッションはたくさんありました。そしてセッションのテーマや複数のスピーカーの講演内容から、「今後のコンテンツマーケティング成功の鍵は外部のリソース活用にある」との印象を強く受けました。
オーディエンスに「ベストな回答」を提供するためにできること
TopRank Online Marketing のLee Odden氏は講演の中で、「強力なコンテンツマーケティング戦略とは顧客にとってベストな回答を提供することにほかならない」と発言しました。つまり「オーディエンスにとってのベストアンサーを提供するために何が必要なのか?」と問うことこそがコンテンツマーケティングの基本だというんですね。
そしてベストアンサーを目指すには、自分たちを象徴する「強み」にこだわる必要があると。「平均的な」コンテンツでは成功できないんですね。
ちなみに彼単独のセッションタイトルは「Influence the Influencers」。まさしく外部のインフルエンサーとWin-Winな関係を築くことこそが、ベストアンサーへの道であり、強力なコンテンツにつながるということでしょう。
多様なコンテンツニーズも外部リソース活用を後押し
State of DigitalのBas van den Beld氏は、一般の参加者としてSESに参加していたわずか7年前から現在は世界中を講演して回る立場に。そのようにご自身の人生に劇的な変化もたらしたブログメディア成功の要諦について語りました。
State of Digitalでは世界中に散らばるブロガーをオンラインでマネジメントしながらコンテンツを量産しているとのこと。
一般企業のようにオフィスに集まらなくても、世界中のエキスパートを束ねて良質なコンテンツをオーディエンスに提供することができる。そんなイマドキの運営を体現しているようですね。
彼のプレゼンで印象的だったのは「平均的なユーザー像なんてものはない。購買へのプロセスはみんな違う」というコトバ。
これは多様なペルソナにぴったりの情報を量産し続けることの大切さを示唆しているのではないでしょうか?言うのはカンタン。でも実行するにはコンテンツづくりの負荷がスゴいですよね。この問題の解決策としても外部インフルエンサーを活用するというのは機能すると思います。
とくにブロガーがState of Digitalの場を心地よく感じながら、コンテンツ提供で貢献してくれるためのマネジメントに気を使っている様子。誕生日のお祝いなど、遠くはなれているからこそのエモーショナルな気遣いが印象的でした。このアプローチ、企業だけでなく、報酬で動機付けしにくい緩やかなつながりのコミュニティ運営でも参考になるのではないでしょうか。
このケースはベストアンサーを読者に提供するために世界中のエキスパートを活用するアプローチとしてユニークな好例だと思います。
今回のまとめ
話をまとめますと・・・
・オウンドメディアを中核にしたコンテンツマーケティングは急速に普及してくる可能性大。
・結果としてコンテンツ間の競争激化。戦略、コンテンツの巧拙が成果の差として現れやすくなる。
・多様なオーディエンスにとってベストな情報、ドンピシャな回答をいかに提供しつづけるかが大切。
・そのために社内のリソースにこだわらず社外の人材リソースとの協力関係づくりが不可欠
・そのアプローチは多種多様。
上質なコンテンツが上質な(ペルソナに近い)オーディエンスを集め、上質なオーディエンスに外部のインフルエンサーは魅力を感じる。
結果として彼らとのWin-Winな協力関係が生まれ、さらに上質なコンテンツが量産されるスパイラル。目指すべきはここかと。
最後に、外部の人材リソースをインフルエンサーとして活用することは、組織内のリソースが限られた小規模な事業者やコミュニティこそより真剣に考える必要があると思います。領域を絞り、エッジの効いたコンテンツを提供できる仕組みづくりをがんばっていきましょう。
ウチもがんばらなきゃ。